電線とケーブルの規格の種類について解説
規格について
電線・ケーブルの選定等で「アメリカに輸出するのでUL規格適合品が必要!」など、よく耳にする規格という言葉ですが、規格とはなんでしょう?
ケーブルの規格について
規格とは、製品やサービスの品質、性能、安全性などについての共通の基準やルールのことです。この基準に従うことで製品が一定の水準を保ち、互換性や安全性が保証されます。例えば、ドライヤーのコードを壁のコンセントに挿す際、プラグの形状があっているかを気にすることはないと思います。これはプラグの形状やコンセントの形状が規格で定められているためです。スマートフォンの充電器などは別機種の充電器は挿せないものがありますが、これはそのスマートフォンが採用している規格が異なるためです。また、これらの製品は電気を使用していますが、通常の使用範囲であれば感電などを気にされることはないと思います。これらを気にせず安全に使用できるのは規格があるおかげです。
規格にも様々な種類があり、国際規格や国ごとに定められている国家規格、業界規格などがあります。
法的強制力のあるものから指標となる参考的なものまで効力も様々です。
国際規格
国際規格とは、国家間の協力や世界的な標準の発展や促進を世界中で広く採用されることを目的に定められた規格のことでIEC規格やISO規格が該当します。これらの規格があることで、世界中で同じものを同じように使えるようになります。例えばクレジットカードはどのブランドでも同じ大きさで、ブランドによっては世界中で使用可能です。印刷でよく耳にするA4用紙も国際規格で規定されており、日本から海外にA4用紙を持っていき印刷機で印刷することが可能です。
ケーブルにも国際規格が存在し、産業用機械などで使用されるケーブルの安全規格IEC 60227シリーズやLANケーブルなどの通信用途の規格、IEC 61156シリーズなどがあります。例えば、LANケーブルは産業用途でも多用されており、国ごとで寸法等変えることなく同じように使用することができます。
そして、これら国際規格を国家規格として採用している国も多くあり、輸入や流通の際に適合を求められる場合があり、国際規格への適合は重要な要素となっています。
上述の通り国際規格は世界中で利用可能な基準ですが、各国には独自の規制や標準(国家規格)があり、それとの整合性を取ることが難しい場合もあります。
海外規格(その1)
各国独自の規制について、アメリカではどうでしょう?
アメリカでは、製品の製造や販売に関して一般的に、民間団体が策定した規格のような任意基準が、製品の安全性確保や消費者保護を担っておりANSI(米国国家規格協会)により米国国家規格として認められるケースが多くあります。
中でもケーブルに直接関わりのある規格として米国防火協会が制定したNFPA 70 (NEC)とNFPA 79があります。上記の規格で使用する電線や、電線の配線方法などが規定されています。これらは型式で規格にリストされており、リスティングケーブル(Listing Cable)と呼ばれています。さらに詳細なケーブルの要件はULという認証機関が規格を作成しており、ANSIにより国家規格として認められています。さらに独自のケーブル規格も作成しており、レコグニションケーブル(Recognition Cable)と呼ばれています。
そしてこれら規格に適合していると認証した製品には「ULマーク」を表示することが認められており、適合の証明となります。ULはアメリカでかなり知名度が高く、アメリカで使用される産業用途のケーブルは、ほぼUL規格への適合が求められます。
海外規格(その2)
欧州連合(EU)域内で指定製品を流通させる際には「CEマーク」と呼ばれるマークが必要となってきます。このマークは「EC指令」によってマークが必要な製品が指定されており、EN規格やEU加盟国の国家規格に適合させなければなりません。
中国でも独自の規制があり、中国強制認証制度(China compulsory certification) CCCと呼ばれる制度があります。これによりこの制度の対象となる製品を中国に輸出するには、中国国家検査機関の審査、規格への適合と「CCCマーク」の表示が必要となります。
他にも韓国、インド、オーストラリアなどほとんどの国に国家規格が存在しています。
国内規格
日本国内では電気用品安全法と呼ばれる電気用品の製造・輸入・販売を事業としておこなう場合の手続きや罰則を定めた法律があります。この電気用品安全法(PSE)に定められている電気用品が満たすべき技術的な基準については「電気用品の技術上の基準を定める省令」があり、ケーブルの具体的な構造、物理特性、電気特性が定められています。適合している製品には「PSEマーク」の表示が義務付けられています。
まとめ
国際規格で世界的に使用できるような取り組みがされているものの、各国それぞれの規格、規制があるため、各国の規格に適合したケーブルの選定は非常に複雑で難しくなっています。通関等でケーブルが検査に引っかかってしまい規格の適合品であることの証明を求められ困っているといったご相談もよくあります。ケーブルを選定する際にはまずご相談いただけると幸いです。